失敗しない大谷石の選び方

大谷石(細目・中目・荒目)

大谷石の塀や貼り石を見ると、同じ大谷石でも白っぽいものからこげ茶色の石がありますよね。またミソがほとんど無い石もあればミソが抜けて大きな空洞ができている大谷石もあります。一口に大谷石と言っても実は色合いやミソの大きさ、石の硬さが全く異なります。ここでは大谷石の種類とそれぞれの特徴を詳しく説明します。

ミソ
大谷石に見られる斑点状の模様。粘土鉱物と言われています。経年変化でミソは剥がれ空洞になります。

大谷石は細目・中目・荒目の3種類の石目に分類されます。

細目(さいめ)・中目(ちゅうめ)・荒目(あらめ)と読みます。「さいもく」や「ほそめ」などと読んでしまいそうですが、昔から大谷石はこのような呼び方で分類されています。荒目を粗目と書く場合もあるようですが特に決まりはありません。

ではどのように分類されているかと言うと、ミソの大きさで呼び方が変わります。ミソが小さい石は細目、ミソが大きい石は荒目、中間もしくはミソが大きいものと小さいものが混ざっているのが中目です。

大谷石は大谷町を中心に東西約8km、南北約37km、地下200~300mの範囲に分布しており、採掘している場所によって石目が変わってきます。

細目大谷石の特徴

細目大谷石

細目大谷石。現在採掘されている大谷石で最もミソが小さいもの。

大谷石はミソが小さくなるほど肌面が美しくなり、価値が上がります。きめ細かい美しい肌面の細目大谷石は極上品と呼ばれ、帝国ホテルロビーの壁面彫刻にも使用されています。

現在採掘されている細目大谷石は色の変化が緩やかで、ベージュ~肌色で落ち着きます。主な使用用途は貼り石・石塀・門柱・彫刻・レリーフです。ミソが小さく加工がしやすいことから大谷石細工(伝統工芸品)でも使用され、インテリアとしても人気があります。今話題を集めている大谷石のコースターはこの細目大谷石で制作されています。

中目大谷石の特徴

中目大谷石

中目大谷石。ミソの大きさが小さいものから大きいものまで含まれている。

大谷石の色合い、ミソの大きさ、強度が他の石目と比べてバランスが良くコストパフォーマンスに優れた石目です。経年変化で色は茶色になり、ミソの大きさも荒目ほど大きいものは含まれず、大谷石らしさを求める方から人気があります。使用用途は貼り石・石塀・門柱・敷石・石窯・彫刻・レリーフ・工芸品・インテリアとなんでもこなせる優等生です。

荒目大谷石の特徴

荒目大谷石。ミソが大きいものが含まれている。青い玉石が目立つ。

柔らかく加工がしやすい大谷石ですが、とても硬く加工がしにくい石目があります。その石目は荒目大谷石と呼ばれミソが大きいのが特徴です。その硬さから風化しにくく、外構や寒冷地での使用に適しています。また他の石目より耐火性にも優れます。

現在採掘されている荒目大谷石は色の変化が強く茶色に変化しますが、次第に色が冷めて大谷石らしい色合いに落ち着きます。使用用途は石塀・貼り石・敷石・土留め・石窯・焼却炉で使用されています。

その他の大谷石や似ている石(番外編)

大谷石と同じ形状に加工されることから、よく大谷石の蔵や塀と間違えられる石があります。細目・中目・荒目では分類されていない大谷石や、宇都宮市で採掘される大谷石と同じ性質を持つ凝灰岩の一部を紹介します。

大谷戸室石の特長

大谷戸室石の肌面

戸室石(とむろいし)と読みます。真っ白な肌面が特徴的な高級大谷石です。ミソが細目大谷石よりも小さく経年変化で色が変わらないこともあり、とても人気がある石です。石が柔らかく加工がしやすいため、カエルや燈籠などの工芸品でもよく使用されています。

現在は採掘が終了しています。

田下石の特長

田下石の肌面

田下石(たげいし)と読みます。田下町で採掘されるミソが無いきめ細かい肌面の大谷石です。大谷石と同じような性質を持ちますが、地名を冠して区別されています。大谷石のようなミソの心配はありませんが、錆が出てしまうことがあります。

錆が表面に出てしまったもの。黄色いシミのような錆が大きく広がる。

錆が表面に出てしまったもの。黄色いシミのような錆が大きく広がる。

現在は採掘が終了しています。

徳次郎石(日光石)の特長

徳次郎石(日光石)の肌面

徳次郎石(とくじらいし)と読みます。徳次郎町で採掘され、大谷石のようなミソがほとんど無く青みを帯びた白く美しい石です。その美しさは大谷石の3倍の値がついたほどでした。デザインに凝った複雑な彫刻を施されることが多く、石蔵や石瓦として利用されてきました。昭和40年~50年代には日光石(にっこういし)と称されて出荷されています。

現在は採掘が終了しています。

新大谷石の特徴

新大谷石は大谷石を細かく砕き骨材に使用し、セメントで固めた擬石大谷石です。細目大谷石のきめ細かい肌面と、荒目大谷石以上の強度、採掘されたばかりの青みを帯びた色合いが特徴的です。使用用途は石塀・門柱・敷石・土留めなど外構での使用を得意とします。

大谷石の色について

青い大谷石

水分を含んでいる生の大谷石。

白い大谷石

ある程度乾燥が進んだ大谷石。

茶色い大谷石

色の変化が進み、茶色になった大谷石。

青色、白色、肌色、茶色など大谷石には複数の色があるように見えるかもしれません。これは大谷石に複数の色があるわけではなく、経年変化で色が変化したのです。採掘されたばかりの大谷石は水分を多く含んでいて青色をしています。その後、石が乾いていくと徐々に白色に変化します。また地表に出たことで大谷石に含まれる鉄分が反応し、石の表面が茶色く変化していきます。

大谷石に含まれる鉄分の量で色の変化に差が起こり、肌色ぐらいで落ち着く大谷石もあれば、こげ茶色に変化するものもあります。こげ茶色に変化するものは大谷では石が焼けるといいます。

茶色くなった大谷石を元に戻す方法
色が変わった大谷石は酸化還元剤を塗布すると青色に戻ります。即効性がある身近なものですとCCレモンが有名です。水で薄めたCCレモンを色が変化した大谷石にかけると青色に戻ります。※色が戻るのは一時的なもので、よく水洗いをしないと元の色に戻るときに赤紫色のような色で戻ってしまったり、カビが生えるため推奨しません。

大谷石の等級について

大谷石は石目の他に等級でも分類されます。採掘場ごとにミソの大きさで等級分けし、最もミソが小さいものを「1等品」「1級品」「特上」などと言います。例:細目特上 荒目1等など。

荒目大谷石

荒目大谷石の1等品。荒目大谷石でありながらミソが小さい。

荒目大谷石

荒目大谷石2等品。荒目大谷石は原則的にミソが大きい。

違いがよく分かるように特にミソが大きいものと小さいものを選んでいます。

平均的なものは「並品」と呼び、最もミソが大きいものを2等品、2級品などと呼びます。1等品のほうが価格は上がりますし、2等品は価格が下がります。分類する際のミソの大きさに厳密な決まりは無く、職人の目と経験で分けられます。相対的に分類される場合もあります。

まとめ

大谷石には3つの石目があり、それぞれに特徴があることが分かったと思います。そして採掘場ごとに等級があり、ミソの大きさが分類されるというわけですね。

  • 石窯で大谷石を使用したいけどミソは出来るだけ小さくしたい・・・荒目1等品
  • 室内で大谷石を貼りたいけどきめ細かい美しい大谷石が良い・・・細目1等品
  • 石塀でミソが小さい大谷石を使用したいけど、色も茶色く変化して欲しい・・・中目1等

このようにイメージしている大谷石の風合いや使用用途によって使い分けができるわけです。
今回紹介した石目の特徴は「現在、坑内掘りで採掘されている大谷石」に限ったもので、40年以上前は100社以上が大谷石の採掘を行っており、それぞれの石目の特徴に多少、当てはまらないものも存在します。また中目や荒目は等級によってどちらにも見える場合があり、昔より厳密に分類されていません。